2001年(平成13)にオープンし、長く地域に愛され続ける「らーめん泰平」。鶏ガラベースに野菜をたっぷり入れて煮込んだ甘めの播州ラーメンです。自家製チャーシューやから揚げなども人気で、テイクアウトされる常連さんも多いのだとか。21年間、奥様と二人三脚で切り盛りしてきた店主・平野正裕さんに話を聞きました。
ラーメンにチャーシュー、唐揚げ、焼きめし…。人それぞれのお気に入りがある。
ラーメンは、ベーシックなしょうゆラーメンをはじめ、塩、みそ、チャーシューメンの単品に、白ごはんや焼きめしをセットにもできます。それぞれにファンがおり、「うちのみそラーメンが一番好きと言ってくれる方もいれば、ずっと塩ラーメンをオーダーする人もいます」と、平野さん。チャーシューメンの自家製チャーシューはほろほろに煮込まれていて、やみつきになる人も多いとか。
スープは鶏ガラベースで、魚貝出汁とタマネギやキャベツなど6種類の野菜も合わせて5時間ほど煮込んだものです。コクのある、それでいてあっさり。このたっぷりの野菜が、甘めのスープに仕上がっている秘訣です。野菜は時期や産地によって水分量や味も変わるため、それに合わせて火の入れ方や処理の仕方などを調整します。「同じキャベツでも、夏と冬では全然違う。産地でももちろん味は変わるし。毎日同じことをしているようで、日々変えてます」と、平野さんは明かします。
天津飯のように見えますが、こちらは「ふわたま丼」。なんと500円!半熟のふわふわ卵に甘酢あんかけではなく、塩味ベースのあんをごはんの上にかけたもの。どこか懐かしい、ほっとするやさしい味です。飲んだあとの一杯にいいかも!?
単品注文も可能な焼きめしは、ソース味。「この味が好きと言ってくれる人も多いです」と、根強いファンがついている様子。ハムではなくチャーシューが入っているのも美味しさのポイントです。
兵庫県産若鶏のモモ肉を使った唐揚げも人気メニュー。薄味で柔らかくジューシーで、年配の方も食べやすいと選ばれます。持ち帰りオーダーも多い逸品です。
会社員時代に2度の立ち上げ事業を経験し、ついに自らの店を。
21年前、平野さんは2度の会社員を経験したのち、脱サラして奥様とラーメン泰平をオープンしました。まず、大学卒業後は大手スーパーの新店舗立ち上げに関わるスタッフとして入社。仕入れバイヤーも経験し、忙しい日々を5年ほど送りました。「野菜など食材を見極める目というのは、そのときに養われました」。その後、知り合いの紹介で繊維系の会社の新規事業を立ち上げるための人員として採用。「社内にその事業のことが分かる人が誰もいなくて孤軍奮闘。毎日手探り状態で仕事に明け暮れていました」と、その会社には16年ほど勤めました。
この2度の事業立ち上げに関わった後、自分で何かやってみようと考え、「食材ロスが少ないし、庶民的で多くの人に愛してもらえるかなと思って」と、ラーメン店を開業したのでした。とはいえ、経験は全くなかったため、準備期間の半年で大阪や神戸などあちこち食べ歩き、こってりしない甘口ラーメンにたどり着きました。「うまく行かない時期もあったけど、お客さんや家族、友人たち、地域の人たちに支えてもらいながら1年、2年と続け、なんとか21年間やってこられました」と、周りの方々への感謝を口にします。
無駄なことはひとつもない。会社員時代、イカ釣り、そして今にも通じるタフさ。
徐々にお店が軌道に乗り、趣味を持とうと平野さんはイカ釣りを始めました。多いときには50名ほどの会員を有するほどのクラブを自らつくり、丹波のみならず神戸など各地から集まる仲間ができ、「イカ釣りを楽しみに仕事してる、っていう感じでしたね」。今は活動休止中ですが、個人的には続けており、「昨日も竹野まで行ってました」と楽しそう。釣ってきたイカは、刺身やてんぷら、酢の物、イカ肝のニンニク炒めなどにして、お客さんに振る舞うこともあるのだとか。「うまく釣れないときは、上手な人のやり方を倣って、自分なりの方法を見出す。その過程とうまくいったときの感覚が楽しい」。
大きくなって独立した息子さんたちが幼い頃、少年野球のコーチを務めていたこともあり、野球には縁が深く、少年野球をはじめバレー、ミニバス、ソフトボールなど、子どもから大人たちのスポーツクラブなどの打ち上げで利用してもらうことも多いそう。「少年野球をやってた子が大きくなって、甲子園に出るからと応援に行ったことも」。中にはプロ野球に入った子もいて、「今でもその親御さんには通っていただいてます」と、地域との強いつながりは続きます。
他人から見れば会社勤務とラーメン店経営、畑違いのことに見えるかもしれませんが、平野さんは「やって良かった」と胸を張ります。壁にぶち当たった時に思考錯誤しながらいろんな策を講じて答えを導き出すという考え方は、どんな仕事でも、イカ釣りでさえも一緒。肉体的、精神的な辛抱強さも会社員時代に鍛えられたと言います。「めっちゃ儲かるというのはありませんでしたが、子ども3人を育て家族を養って、ごはんをちゃんと食べられています。それでいいかな」と、笑って答えます。
これからもイカ釣りを続けながら、地域の人たちに愛されるラーメン店を続けていってほしいです。
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