大正時代から親子4代にわたって印刷業を営む永井印刷所は、柏原町の商店街にあります。歴史を感じる家屋のなかでは、3代目社長の永井訓夫さんご夫妻と、4代目となる息子の考洋さんが、主に丹波市一円のお客様を対象に、日々印刷機をまわしています。
時代の変化に適応しながら、荒波を乗り越える
あまりに長い歴史を歩んできたゆえか、「大正何年に創業したか?もう分からないなぁ」と、笑って話す3代目。「印刷業界」の過渡期まっただなかを駆け抜け、高度成長期に活版印刷からオフセット印刷に変わりました。
「活版の時代は、印刷に使う活字を集めて印刷をするから、人手がたくさん必要でした。手間も時間もかかるから、夜遅くまで作業することなんて日常茶飯事。当時は若かったけれど、それでも体力的に厳しかったですね。経済が良くなり、人件費の高騰も厳しさに追い打ちをかけましたが、人手のかからないオフセット印刷機が出てからは、作業が簡素化されてぐっと楽に効率的になり、様々な印刷物の受注が可能になりました」と、3代目は話します。
現在、活版印刷は行っておらず、オフセット印刷のみです。事務用封筒や伝票、チラシ、名刺、ポスターといったオフィスや事業で使われるものを中心に「パンフレットや冊子もの、横断幕などもできますよ。デザインからうちで行いますので、お気軽にご相談ください」と、4代目の考洋さん。
丹波市内の各種事業者や、お店や工場、病院や施設、自治体関連など、お客様の業種業態はとても広いそうです。「いろんな業界の方がいらっしゃって、ときにお客さんに教えてもらいながら、勉強しながら、ここまでやって来られました」と、話します。
どんな時代になっても、お客様の希望に応えたい
一番大切にしていることについて3代目は、「やっぱり、お客様第一、ってことですね。どんなご要望でもお受けしようと思っているし、“急ぎで”って言われたら、精一杯応えたいと思ってます」と、言います。
とはいえ、最低ロット数に決まりはあるだろうと思って尋ねると、「1枚からでも刷りますよ」とのこと。物理的に無理だったり、あまりに無茶な内容でない限りは、「お客さんのご要望に応えて、満足してもらいたい。お客さんの気持ちに合わせて仕事ができれば、と思っています」と、3代目は語ります。
デジタル化されて手間が減ったとはいえ、印刷するために版をつくったり、お客様の求める色を出すためにインクを混ぜ合わせて調合したり、人の手(技)や感覚(センス)は必要です。
刷ってみて思っていた色が出なかったときは、そのたびに機械を洗って、イチからインクを調合しなおすそう。プロフェッショナルな仕事ぶりをさらりと話してくださる柔和なお人柄に、長年の常連客が多いというのも納得です。
4代目は、「お客様が満足される印刷物に仕上げるのが私たちの仕事。喜んでいただくために、頑張っています」と、軽やかに話します。
日々、最善を積み重ねて、未来へ向かう
インフラや不景気、デジタル化の波など、行く末が不透明、不確実なのは、印刷業界も例外ではありません。「今はまだ、かろうじてやっていけていますが、今後について予想するのは難しいですね。今はただただ、見えない未来に不安がるのではなく、現状できることを精一杯やっていく、そういった思いです」と、4代目は語ります。
時代や機械が変わろうとも、変わらないのはお客様への想い。「フル稼働している印刷機は不具合や故障がつきもの。すぐに修理を依頼しますが、それでも多少お客様をお待たせしてしまったり、ご迷惑をおかけすることにもつながります。なので、日々の機器メンテナンスは本当に大切にしています」と、4代目。仕事道具をいつも最高の状態にしておくことも、お客様に喜んでもらうために必要不可欠なことだと教えてくれました。
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